ゲームのちから
近頃よく聞く『シリアスゲーム』という微妙なニュアンスの言葉が気になってしょうがないので、「シリアスゲーム―教育・社会に役立つデジタルゲーム」(藤本 徹 (著) 東京電機大学出版局)を読んでみた。内容については、その骨子に近いものが、昨年8月のBEATセミナーのレポートに書かれているので、手っ取り早く概略を知りたい人は、そちらを参照。
http://www.beatiii.jp/seminar/023.html
ここでは、その中から私がポイントだと思う点を2点抜粋するに留める。
- 「シリアスゲームは、シミュレーションゲームやエンターテインメントゲームといったゲームの形態ではなく、ゲームを具体的な問題に対して使用するという「コンセプト」を指しています。」
- 「シリアスゲームというコンセプトによって、これまでに連携がなかったユーザー、スポンサー、研究者、開発者、教育者のコミュニティが集結され、ノウハウの共有や人的交流が促進されている。」
事例なども読んでみるとまぁ、騒がれてるだけのものはあるのだろうし、うまく使えば役にも立ちそうな気がする。ただ、個人的には自分がほとんどゲームをしないヒトなので、まだまだ懐疑的。
そんな中で、私が納得した調査事例が、ロッサーらが実施した、アクションゲームと腹腔鏡手術に関するものである。同書から引用する。
●1週間に3時間以上ゲームをした医師は、そうでない医師に比べ、腹腔鏡手術中のミスが37%少なく、手術にかかる時間も27%短い(中略)
●ゲームの経験やプレイの度合いが、医師としての経験年数、性別、利き手といったことよりも手術の結果を左右する変数となっている。
これなんかは、結局、腹腔鏡手術という「現実」の方が、ゲームの世界に近づいてきているだけなのかも知れないが…。将来、腹腔鏡手術を受けることになったら、担当医に「セガの『スーパーモンキーボール』得意ですか?」と聞いてみよう!