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「渋滞学」(西成活裕 新潮選書)

地味な装丁で地味なタイトルながら、帯に書かれた「茂木健一郎氏 絶賛!」という文字だけで去年から気になっていた本を、今日ようやく手にした。(遅っ。)…なんとなく、タイトルのイメージから、プロセスの最適化の観点から仕事にも活かせないかな、と淡い期待も抱きながら。

さて、本の内容だが、ニュートン粒子・自己駆動粒子・セルオートマトン法・ASEP・フロアフィールドモデルなど専門用語は出てくるものの、数式などは極力排して一般向けに書かれているため、(根っからの文系の私にも)非常に読みやすく面白かった。

ASEP(非対称単純排除過程)による車の渋滞の説明から始まり、心理学的側面も含めたフロアフィールドモデルでの人の渋滞の説明などを通じて、まずは、科学的なアプローチとしてセルオートマトン法のような優れたトイ・モデルの重要性を思い知らされる。

そして、圧巻は5章。世の中のいろんな現象を「渋滞学」で解き明かしていく。まさに、茂木健一郎氏の帯の言葉にあるように、「この世界の中で起こっている様々な現象が渋滞と同じ理論で解き明かされていくプロセスには、思わず『そうだったのか』と叫びたくなるほどの快感がある」。

最終章では、「渋滞学のこれから」として、ネットワーク理論との組み合わせでの可能性や、自己駆動粒子のモデルに心理学やジレンマの要素を反映していくことの課題などが述べられている。ネットワーク理論と言えば、去年読んだ「複雑な世界、単純な法則 ~ネットワーク科学の最前線」(マーク・ブキャナン 阪本 芳久 草思社)も面白かった。スモールワールドとかスケールフリーの話。

こういう良書に触れると、文系の人間でも(あるいは文系の人間こそ?)この世界を理解するために最新の科学に親しむ必要があるのかな、と思う。